劇場版ソードアート・オンラインのお話
僕は川原礫先生の作品が大好きなんですが、今日はそんな氏が書き下ろした映画、劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケールのお話です。
率直に面白かったこの映画ですが、興行収入を見ても大ヒットしているみたいですね。
SAOの映画の興行収入そろそろまどマギぐらい行くのかヤバイな……https://t.co/GKCA74VVnR
— さくらあん (@sakurangge) 2017年3月29日
まどか☆マギカ新編叛逆の物語も僕の大好きな作品の一つなので少し複雑な気分です。
閑話休題。
あえてこの映画のヒットのポイントをあげるなら以下の二つがあるんじゃないかなあと思います。
1、映画館で見るエンタメとしてわかりやすく面白い
2、コアなファンを満足させる作りこみがある
なぜこんなことを言い出したのかというとまんまこれの1が僕が一度目にこの映画を見たときに感じたこと、2が僕が劇場を見て、そしてSAO劇場版裏記録全集を見た後で思ったことだからです。
1については、もしあなたがこの映画をご覧になられていた方なら納得していただけるところが大いにあると思います。例えばSAOではTVアニメ時代から音楽は梶浦さんですが、この梶浦サウンドはやっぱり劇場のいい音響で聞くと身を震わせるものがあります。他にもオーディナル・スケールの見た目にも派手な戦闘が逐次起こります。作画もすごいもので見ごたえ十分です。アスナの入浴とかでサービスシーンでさえ完璧です。
後はこれは川原先生が元から特異な事で、SAOやAWが人気を博す理由の一つだと思いますが、悪の描写がうまく、見て読んでいるものがわかりやすく内容を把握できるっていうのも、あると思います。
ストーリーの細部にまで言及していくときりがないので、このあたりで終わっておきますが、劇場版SAOが映画館で見るエンタメとして十分であることは、「なんか面白いって聞いたから何とはなしに見に行ったけど、実際面白かった」という人を増やしているでしょうしまたその声が人を呼んで、こういうヒットにつながっているんだと私は思っています。
で、次に2の話なのですが(今回の記事で私が話したかったのはこっちです)
この映画、表層からみてのわかりやすさとは裏腹に、ものすごく作りこまれているのです。プロジェクトの大きさと、作品の長さからくるいろいろな物事の作りこみ、ですね。
自分は二回目のオーディナル・スケール(OS)を見に行く前に、特典でもらえたエイジ<後沢鋭二>のSAO時代のユナとのかかわりを描いた小説、ホープフル・チャントを読んでから行ったのですが、それを踏まえて映画を見るとわかることがいくつもある。例えばOSのアイドルの方のユナが持っている金色の球体はきっとエイジが生前ユナが常に飴玉を持っていたことからそういう形になっているんだろうなとか、OSのボスバトルでユナが歌いだすとゲームでバフが付くんですが、これはSAO時代のユナが持っていた珍しいスキルである<吟唱>(チャント。味方にバフを付与するスキル)を絶対意識しているんだろうなとか。
これはもちろん、この映画のためだけに決められたことでそんな大仰に作りこみとか行くほどのことでもないかもしれないんですが、二回目に見てもらったSAO劇場版”裏”記録全集、これがすごいんです。これを読んでいると、今書いたことも含めて本当にいろんなことが丹念に練られているんだなと感じます。
(←これです)
自分も結構昔から川原先生の作品が好きでそれなりにはSAOのことも知っているつもりだったんですけど、制作陣の人たちが本当にSAOが好きで、いろいろ読み込んで作っているんだなっていうのが感じられました。
正直、映画を見て感じたあれやこれやがほとんど書いてあったりして、「俺は制作陣の手のひらの上だったのかーー!」って天を仰ぐほどですw(けれどそれが嬉しい)
なんかもうこんなベタなことをわざわざ言いたくもなかったんですけど、もしかしてやっぱり、作り手の愛がある作品はいい作品なのかもしれないと思わせられたり。
全集の中で話されていたことをあまり書くのもはばかられるので、そのネタバレ対談で一番なるほどと膝を打った話だけ書いておきますと、ユナはSAO第100層ボスのデータとかを元に作られていることは劇中で話されていますが、OSでユナについて回っているマスコット的な円盤状のやつがいますよね、そいつが実はその100層ボスの外見を元にして作られているところなんて「あー、それは納得だわ」となりました。勘が鋭い人は気付いていたらしいんですけどね……。
劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール二回目見てきました感想みたいな pic.twitter.com/s1Zcuou22I
— さくらあん (@sakurangge) 2017年4月14日
もう一度文字で起こすと以下なんですが、折角ですのでこれについてももう少し書きたいと思います。
トップダウン型AIでの故人の再生を目指したオーディナル・スケールからボトムアップ型AIの物語であるアリシゼーションにつなげていく流れも完璧だし、最終的にアスナが記憶を呼び戻したのはシステムの力じゃなくてそれを凌駕すると茅場が信じた感情の力であるのもやっぱ最高だし、見せ場のバトルでそれまで不慣れな人たちと戦闘してたせいでうまくいってなかったパーティ戦が旧知の人たちと戦うことでSAOの超基本戦闘術にして最大の肝であるスイッチを見事に決められてるのも抜群に見栄えするし、それに何より特典でエイジの過去話読んだりしてユナのこと知ってから見るこの映画最高に面白いな。
まず、最初の要素から。
SAOファンとしては今後アリシゼーションのアニメ化(劇場最後に現れるSAO will returnの文字とラースにようこそ、ですよ!)がおそらく決まったという事実がたまらないというのはもう隠しきれない感情なんですが、それはともかくとして。
これは一度目にも思ったことではありますが、改めて時間を置いてみると今回のOSは
VR⇔AR
と川原先生がこれまでのSAOで扱おうとして扱いきれていなかった(と勝手に僕が推測する)要素で構築されていて、実にしっくりくるわけです。
でも実際オーディナル・スケールはSAOの本来追い求めているであろう部分に近い話だと思う。現実と仮想世界の境界線って本当はなくて自分たちの感じる世界が本当なんだみたいな。AR拡張に川原礫が行き着くのはだから自然な流れなのかもしれない。
— さくらあん (@sakurangge) 2016年7月2日
劇場化が発表された当時、僕はこんなことを言っていたんですが、改めて映画を見るとARを扱うというのは自然な流れだったかもしれないけど、川原先生が描きたかったのはやっぱりVRでVRの世界に生きる人々何だろうし、あえて時系列としてアリシゼーションというボトムアップ型AIを作る究極のVRワールドの話に入る前にこのオーディナル・スケールを挟みこむことはすごく合理的で納得のいく話だなあという次第です。
次にやっぱりこれがしたい、感情の話。
やっぱりこれが僕が一番この作品を好きな理由なんだと思います。何かといいますと、このSAOひいては川原作品全般に言えることかもしれないですが、ゲームというシステマチックな世界を描いていながら、いえ、描いているからこそ、そのシステムを超える感情の力っていうのがクローズアップされて、物語のクライマックスに関わってくるんですよね。
最終的に、アスナが記憶を取り戻したのは、キリトが強かったからっていうのももちろんありますが、そうじゃない。彼女が記憶を失うかもしれないというときに保身に走るんじゃなくて、自らの記憶を取り戻すために立ち上がり、そして自らとみんなの命の危険が迫っている状況でその恐怖にあらがうという強い意志を持った結果として記憶を取り戻すんです。
そして、それはこの物語のもう一人のヒロイン、ユナにも言える。
映画の中で彼女はほとんど自らのことを語りません(死んでるんだからそりゃそうだw)が、エイジや教授が必死に彼女を生き返らせようとしているなか、彼女だけは(もちろん彼女の思考などを学んで彼女に近づいていた通称白ユナですが)他の大勢のライブに来ていた人々の命を救おうと行動します。
これは皮肉なことに教授の作戦が本当にうまくいっていたからなんだろうなって思うわけです。特典小説を読んでもらえばわかるかと思いますが、(生きていたSAO時代の)ユナは安全な街にいてほしいというエイジのいうことを聞かずレベルを必死に上げで自らもほかの人たちを救うべく攻略組の仲間入りをしようとして、その目的がようやく目前というところでモンスターの罠にかかったプレイヤーを救うために自らの命を投げ出して死んでしまうような少女なんですから。。。
だからこそ、アスナのあの言葉は本当に救いですよね。詳細が思い出せないのが歯がゆいですが、「あなたが圏外に出たのはあなたが勇気を持っていた証よ」みたいな言葉です。
残りはまあ書いてある通りです。
でもやっぱり戦闘シーンで一番グッとくるのは<マザーズ・ロサリオ>11連撃からの<スターバースト・ストリーム>13連撃ですけどね……。
ぐだぐだと感想を書きなぐるような風になってしまいましたがそれなりに文字にしたいことはかけたので僕は満足です。
最後に。
ネタバレ全集によるとシノンさんは東京ドームシティーでのOSバトルのあとおそらくキリトさんのバイクの後ろに乗せてもらったらしいよ!やったねシノンさん!!
シリカが小声で言った言葉に耳ピクさせてしまうところが最高にかわいいシノンさんをみんなよろしくね!
では。